コラム

「掘削除去」と「不溶化処理」について

2020.2.28

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目次

  1. 1. 近年の土壌汚染について

  2. 2. 掘削除去について

  3. 3. 不溶化処理について

1. 近年の土壌汚染について

「土壌汚染」と聞くと、多くの方は真っ先に東京の豊洲市場の土壌汚染問題のことが頭に浮かぶのでは。。。

このようにひとたび土壌汚染問題が発生すると、長く人々の記憶に残るほど大変な事態になることもあるのです。

そもそも土壌汚染とは、重金属や有機溶剤、油、農薬などが土壌や地下水に入り込むことで、人の健康に悪影響を及ぼす状態になることをいいます。

かつては工場からの汚染水や農薬汚染が多くありました。
それでも近年は、商業施設や住宅などでも過去の利用履歴によっては土壌汚染が発見されることがあります。

土壌による健康被害を防ぐことを目的として、2003年「土壌汚染対策防止法」が施行されました。

土地の所有者等は、一定以上の土地の形質の変更を行う場合、都道府県知事への事前の報告が義務づけられ、必要に応じて地歴調査を命じられることになっているのです。

さらに、その結果によって、土壌汚染調査をする必要が生じる場合があります!

「土壌汚染対策法」は、時代とともに改正され、2019年に「土壌汚染対策法の一部を改正する法律」が全面施行されたことで、手続きや調査の契機の拡大等、一部厳格化されています。

他方では、より現実的なルールが設けられ、所有者等にとっては対策工事にかかる費用負担が緩和されるようになっています。

そのため、土地の売買を行う方や建設・建築業に携わる方は、汚染土壌を取り扱う上で必要な知識を備えて適正な取引をする必要があります。

そこで、今回は一般的な土壌汚染対策工事をご紹介したいと思います。

2. 掘削除去について

文字通りにはなりますが、汚染した土壌を掘削し、その場から除去するという方法です。

汚染土壌対策の中でも最も多く実施されている工法といえます。

掘削除去された汚染土壌は、最終処分場などへ運ばれます。

掘削除去された土地は、健全な土壌を使って埋め戻します。

■メリット・・・汚染した土壌を対象地から運び出すため、確実に除去できる方法です。

また、安心感もあるため、その後土地活用をする場合でもイメージがよくなります。

下記は「掘削除去」の事例 です。

① メッキ工場【愛知県名古屋市】

・汚染物質/水銀・カドミウム・ふっ素・ほう素・シアン・鉛

・汚染土量290㎥・工期1カ月・費用1,700万円

工場跡地を売却する際、自主調査を行ったところ、水銀をはじめとする7物質が溶出量・含有量基準を超過して検出されました。

平面および深度の絞り込み調査後、「掘削処理」を実施しました。

②公共施設【愛知県名古屋市】

・汚染物質/ふっ素・砒素

・汚染土量290㎥・工期3週間・費用920万円

公共施設跡地から基準を上回るふっ素と砒素を検出。

自然由来とのことでしたが、汚染土壌として処理してほしいとの要請があり、平面および深度の絞り込み調査後、「掘削処理」を実施しました。

3. 不溶化処理について

先に述べた「掘削除去」のように、対象となる土地から汚染土壌を運び出すことはせず、重金属などの特定汚染物質が水に溶けだすことのないよう、無害な薬剤を混合することで汚染土壌の性状を変更する技術です。

汚染物質が地下水を経由して、健康被害をもたらす恐れがある場合の土壌汚染対策の1つとなっています。

不溶化処理は、掘削除去と異なり、汚染土壌は対象地にそのまま残された状態となります。

その状態は、法律で定められた基準に適合する範囲となっているだけで、特定汚染物質を取り除いたわけではありません。

■メリット・・・短期間で大量の汚染土壌処理が可能、掘削除去と比較すると比較的安価です。

■デメリット・・・処理後も汚染物質が残るため、健康への被害などのリスクもゼロではありません。また、区域指定の解除要件とはなりませんので、法的には汚染土壌のままという扱いになります。

「不溶化処理」の事例

金属加工工場【愛知県名古屋市】

・汚染土量600㎥・工期3週間・費用750万円

工場跡地を売却する際、「自主調査」を行ったところ、基準を上回るふっ素を検出。費用を抑えて対策を行いたいとのことで、表層および深層絞り込み調査後、「不溶化処理」を実施しました。

「掘削除去」と「不溶化処理」を併用した事例

塗装工場【愛知県】

・汚染土量290㎥・工期1カ月・費用1,600万円

塗装工場を閉鎖する際、調査によりふっ素と鉛の複合重金属汚染が判明。駐車場では過去に廃棄した油で汚染された廃棄物があることもわかりました。

平面および深度の絞り込み調査後、鉛の汚染は含有量基準超過であったことと、ふっ素による汚染とは明確に区分することができたため「掘削除去」を行い、ふっ素は「不溶化処理」を実施しました。



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